北海道の菓子店「きのとや」──小さなケーキから始まった、“あきらめない心”
北海道・札幌で生まれた洋菓子店「きのとや」。
美しくて優しい味わいのお菓子は、地元の人にも観光客にも愛されています。
でも、今の華やかな姿からは想像できないほど、創業当時は小さな、そして大変なスタートでした。
今回は、きのとやがどんな困難を乗り越えてきたのか、時間の流れに沿ってやさしく紹介します。
■1980年代:小さなケーキから始まった、小さな洋菓子店
きのとやの創業は1983年。
最初に作ったのは、家庭の食卓にも合うような、素朴でていねいに作られたケーキでした。
開店当初は、決して人通りが多い場所ではなく、
「果たしてお客様が来てくれるのだろうか…」
そんな不安を抱えながらのスタートだったそうです。
実際に迎えた開店初日も、お店は静かで、たまに入ってくれるお客様の姿がとても貴重に感じられたと言います。
それでも創業者の長沼昭夫氏は、気持ちを落としませんでした。
「来てくださった一人の方を大切にしよう。心に残るケーキを届けたい。」
そんな想いで、
・一つ一つていねいにケーキを焼き
・お客様の名前を覚え
・感謝の気持ちを欠かさない
という、こつこつとした積み重ねを続けていきました。

■1990年代:売上が伸び悩み、商品トラブルが発生
順調に見えていた売上が、数年後に伸び悩みはじめます。
さらに追い打ちをかけるように、人気商品だったケーキの一部が、
温度管理のミスで販売できなくなるというトラブルが発生。
本来なら廃棄してしまうしかないほど、大きなロスにつながる出来事でした。
それでも、きのとやのスタッフはあきらめません。
「せっかくの材料。形が崩れてしまっただけで、おいしさは変わらないはず。」
そう考え、“訳あり価格のお得なセット”として販売してみたところ、これが大人気に。
「おいしいお菓子を、気軽に楽しめる」と評判になり、
“素材の良さを安心して楽しめるお菓子”として注目されました。
この経験は、今後の開発にも活かされる大きなきっかけとなっていきます。
■2000年代:工場を増設したのに、まさかの焼きムラ問題
ブランドが少しずつ知られるようになり、思い切って新工場を建設した2000年代。
「これで生産がもっとスムーズになる!」
誰もがそう期待していました。
ところが実際は、新しいオーブンがうまく作動せず、
焼きムラができてしまうという問題が発生。
予定していた新商品の発売も大幅に遅れることに…。
でも、この時もやっぱり諦めませんでした。
- 1℃ずつ温度を変えて焼き直す
- 材料の混ぜ方を手作業で見直す
- 製造工程を細部まで再確認する
そんな地道な努力の積み重ねによって、
「誰が食べても美味しい」と言ってもらえる焼き菓子が完成。
のちに人気の焼き菓子シリーズへとつながっていきました。
■2010年代:開発に苦しんだ「チーズタルト」が大ヒット
現在のきのとやを代表する商品といえば、「焼きたてチーズタルト」。
でも、このお菓子もすんなり誕生したわけではありません。
何度焼いてもタルトが割れてしまったり、中央が沈んでしまったり…。
厨房で試作を続ける日々が、長く続きました。
それでも、
「絶対に新しい味を届けたい」
という想いでレシピを微調整し続け、ついに納得のいく美味しさにたどり着きます。
発売すると、空港や札幌市内の店舗では行列ができ、
きのとやの名前が全国へ広がるきっかけとなりました。
■現在:あきらめない心がブランドを育てた
今では、きのとやは北海道を代表する洋菓子店のひとつ。
空港や百貨店でも定番となり、贈り物としても大人気です。
でもその陰には、こんな時間が積み重なっています。
- 売れないときも、ていねいにケーキを作り続けた日々
- ロスが出ても、工夫して乗り越えた経験
- 工場トラブルを改善し続けた粘り強さ
- 新商品の失敗を、あきらめずに改善し続けた挑戦
これらの積み重ねこそが、今のきのとやを支えている“あきらめない心”なのだと思います。
■まとめ:小さな一歩を続ければ、いつか道が開ける
きのとやの物語は、
「何度つまずいても、ていねいに前へ進めば、必ず道はひらける」
ということをやさしく教えてくれます。
最初の一歩は、小さなケーキからでした。
でも、あきらめず、丁寧に積み重ねてきた姿勢が、
今の華やかな成功につながっています。
おいしいお菓子を食べるとき、
その裏にある“あたたかい努力”を少し思い出すと、
きのとやのスイーツがさらに特別に感じられますね。

