フライパンは家庭でなじみ深い調理器具です、それだけに数多くの商品が存在します。
そのフライパンを独自開発して3年待ちになる程ヒットしたフライパンがあります。
老舗鋳物屋である石川鋳造が開発した、「おもいのフライパン」です。
|
1938年創業の老舗鋳物屋である石川鋳造が開発したフライパンです。
「誰にでもお肉や料理が美味しく作れる調理器具」が「おもいのフライパン」なのです。
早速届いた愛知県碧南市の石川鋳造さんの”おもいのフライパン”で鶏もも肉のグリルを焼いてみたけど、肉汁が閉じ込められてとてもうまかった。子供たちからも大絶賛。これは良いふるさと納税だった。 pic.twitter.com/wZJ0x3Fm1v
— ねぎ式™ 🥃📷🖥 (@ohtsuka) August 30, 2020
開発動機
石川鋳造の1938年創業当時には繊維織り機部品の製造がメインでした。
高度成長期に入ると自動車部品の製造に着手し、加えて産業機械部品にも着手します。
順次、オリジナル商品の開発にも着手しニーズに合わせた商品作りに取り組みます。
しかし、時代の変化により売り上げが三分の一まで落ち込みます。
リーマンショックにより自動車産業が一気に冷え込み、自動車も電動化していきます。
このままいけば自動車部品(エンジン回り)の売り上げも落ち込む一方です。
危機感を覚えた4代目の石川社長は新たな事業の柱を模索します。
オリジナル商品の試行錯誤
社長の思いは、
時代に左右されることなく、自社の強みを生かしたオリジナル商品をつくれないだろうか
ということです。
若手社員を中心にした未来を担う新商品開発チームを発足します。
鋳物に関する80年に及ぶ蓄積されたノウハウをもとに可能性を探ります。
鋳物は熱伝導率と蓄熱温度が高い特徴があるので調理器具がどうかとの意見が出ます。
そして、調理器具の中でも家庭で使用頻度が高いフライパンに注目します。
しかし、ありきたりなフライパンでは多くの既存商品に埋没してしまいます。
フライパンの市場調査
市場調査を行うと、同業他社がすでに自社製造し、製造販売していました。
鋳物で調理器具を作っても二番煎じになると一度は断念します。
別分野での商品開発を検討しますが、調理器具に変わるものが出てきません。
ある時、同業他社の社長と会う機会があり、疑問を投げかけます。
「御社の商品は、海外の調理器具メーカーとデザインや機能性が似ています。類似品にあたるのではないですか?」すると、
「弊社の商品は、私たちがこだわっている精密加工技術を駆使して作った、メイドインジャパン製品です。だから、他社商品とは全く異なります」
と、キッパリ断言したのです。
それを聞いて、なるほどと感嘆し、家庭用品作りに舵を切ったのです。
「同じものではなく世の中にないフライパンをつくればいい」
と決断したのです。
世の中にないフライパン
お肉大好きの社長が、つねずね思っている疑問がありました。それは、
「同じ肉を使っても、鉄板焼き店やステーキハウスで食べると美味しいが、家庭ではなぜか美味しくない」というものです。
「お肉を美味しく焼くフライパン」の情報をインターネットで探しますがありません。
ということは、お肉を美味しく焼くフライパンをつくればいい
ここから、お肉を美味しく焼くフライパンづくりが始まります。
フライパン機能の試行錯誤
鉄板の厚みと取扱を考慮したフライパンの重さの適性を調べていきます。
結果は、厚さ4〜5ミリの鉄板でできるだけ軽いものになります。
問題は、軽いと言っても重量は変わりません。
しかし、取手の長さや角度により感じる重さが違うことに気がつきます。
そこからまた取手の試行錯誤が始まり困難を極めます。
試作品は1000個を超え、何度も挫折しかかったと言います。
それでも諦めず、納得できる取手が完成しました。
コーティングしないフライパン
一般的にフライパンは焦げ付き防止や錆止めのためコーティング加工しています。
しかし、「おもいのフライパン」は無塗装のフライパンです。
コーティングはしていません。
理由は3つあります。
一つ目は他社製品との差別化です。
二つ目は、熱伝導率のためです。塗装すると、熱伝導率が下がってしまい、鋳物の良さ・メリットが損なわれてしまうからです。
三つ目には、安全性です。フライパンに施したコーティングや塗装が、使用しているうちに剥がれて口から入ることを懸念したのです。
鋳造物の表面を滑らかに仕上げる技術は、独自技術で習得していました。
それに加え、特殊な熱処理でサビにくく、焦げ付きにくいフライパンに仕上げました。
おもいのフライパン
おもいのフライパン は、焼く・炒める・揚げる・煮る・茹でる・炊く・蒸す、など
色々な調理法で料理ができる万能タイプのフライパンです。
鋳鉄の「熱を伝えやすく熱を逃がしにくい」特徴で、効率的な調理ができます。
塗装やコーティングをしていない「無塗装」でsyが、焦げ付きにくい仕様です。
お肉だけではなく、パエリアやアヒージョ、ホットケーキなどもおいしく調理できます。
他社製品の特徴
魔法のフライパン
錦見鋳造は、10年の歳月をかけて、「鋳物の調理器具の薄さは5ミリが限界」と言われる中で板厚1.5mmの鉄鋳物の開発に成功しました。
転機のきっかけは、売り上げの6割を占める発注会社が、一方的な値下げを要請してきたからです。
発注会社の無謀な値下げ要求に抗うと、「嫌ならやらなくていい、おたくの代わりはいくらでもいる。」という言葉だったと言います。
魔法のフライパンの1番の特長は、なんといっても熱効率の良さになります。
食材を入れても温度が下がりにくいので、旨みを逃さずギュッと閉じ込めます。
女性でも扱いやすいように、軽量化にこだわっているのも特徴です。
料理をする前に、表面に油をなじませるのが上手に使うコツです。
鉄鋳物に含まれる炭素には、遠赤外線効果もあります。
ティファール
フランスの調理器具トップメーカーであるセブ社の傘下にあるのがティファールです。
国や地域によって「TEFAL」か「T-fal」のロゴで展開をしています。
日本ではセブ ジャパンを設立し圧力鍋、フライパン、アイロンなどを展開しています。
ティファールは、フッ素樹脂加工のフライパンを世界で初めて発売しました。
「世界初の焦げ付かないフライパン」を生み出したメーカーです。
長く使えるフライパンの特徴は、表面加工とフライパンの素材で決まるといいます。
「チタンコーティング」は、フッ素コーティングにチタンの粒子を配合したものです。
チタンは強靭で耐食性が高く、強度最強のコーティングです。ティファールが代表的です。
チタンコーティングのフライパンなら、金属ヘラを使えるものもできるようです。
取っ手を外してまとめて収納できる物もあり、コスパを重視するならティファールです。
バーミキュラ
一般的な鉄製のフライパンほど重くなく、錆びないので手入れも簡単です。
特徴は、フッ素樹脂加工のフライパンが苦手とする高温で炒め物や揚げ物ができます。
耐久性があって万が一のリペアも可能なので安心です。
新しい技術の鋳物ホーローで、食材から出た余分な水分が瞬間的に蒸発します。
まとめ
おもいのフライパン、魔法のフライパン、ティファール、バーミキュラなどのヒット商品が人気を集めています。
フライパン開発の過程を知れば知るほど熱意に感心しファンになってしまいそうです。
各社とも自社独自の技術を結集して、作り上げているので迷ってしまいますね。